「俺ぁ、どうもあの子に嫌われてるな」


そう言って苦笑して咳ばらいをし、割り箸を口に加えてパキっと割り、しっかり両手を合わせてから食べ始めた。

毛の生えたごっつい指には、高価そうな長方形の指輪がはめられている。


宝石の色は赤。

ルビーか?ガーネットか?

本物だったら、かなりの値段だろう。


……本当にこの人は何者なんだろう?

謎が多すぎる。

こんな謎が多い人に、生まれて19年会った事がない。


やっぱり、あっちのヤバイ系の仕事についている人なんだろうか。

俺がぼーっと見ていると、くっきりと大きい目と視線が合った。


俺は思わず肩をすぼめる。

すると、井伏が急に話を切り出した。


「少年」

「は、はい?」

「ちょっと頼まれてくれないか」

「えっ…」


おいおいおい。

俺、これ以上この人に深入りしたくないんですけど………。


井伏はポケットから、ある茶封筒を取り出し、俺に差し出した。