メニューを頼む時、ゆかりさんが空気を読んで俺にめくばせして小さくガッツポーズした。


多分、逃げるな、男だろ!

ってな所か……。


きりきりと胃が痛むような俺をよそに、望乃は積極的に由紀子さんに声をかけた。


「あのぅ……」

「あっ、はじめまして…じゃあ、ないね…」

「はぁ…」

「えっと私、阿笠由紀子って言います」

「どうも…。長谷川望乃です」


微妙ながらもお辞儀をし合う二人。


「私、実は望乃ちゃんの大学の売店で働いてるんだけど、見かけた事ないかな?」


自分で自分を指差す由紀子さんを見て、望乃が少し遅れて、

「えっ、うそ!」と目を丸くした。


どうやら望乃はあんまり売店を利用しないらしい。