由紀子さんは俺の傍へとやってきた。
今日の由紀子さんは髪を下ろしてわりとラフな格好をしていた。
きっと今日はオフだったのだろう。
「実は、さっきまで映画観てたんだ。私、すっごいホラー映画好きでさぁ。それで出てきたら、健吾くんの事見つけたからびっくりしちゃった」
「ホラー…?えっマジで?俺達も観てたんですよ。その映画」
「うそっ!本当に?」
由紀子さんの顔がぱぁっと明るくなる。
きっと最後までちゃんと観てきたんだろう。
「すごーい!じゃあ同じスクリーンを観てたんだ。全然気づかなかった。何か、変な感じ。あ、“達”って?誰かお友達も一緒?」
あ、そうだ望乃……
と思った時には遅かった。
望乃がトイレから戻ってきた。
ばっちりと由紀子さんと望乃の目が合ったのが分かった。
――げ!
すると望乃は目をぱちくりさせてから、「あーーっ!!あの時の!」と由紀子さんを指差したのだった。