「お前なぁ!怖いのダメなくせに何で観るかぁ」
「だって……」
さっきの静寂の場から一転、賑やかで明るいロビーに出た。
望乃は相当映画にショックを受けたらしく、ついに泣き出してしまった。
――あーあ、どうなったんだろう?あの後。
クライマックスを見逃し、本当にあーあだったけど、泣かれてしまってはさすがにそうは言えない。
「もう外出たんだから、怖くねぇよ」
「……」
「あんなの作り話だからよ。現実にはありえないから」
「……」
「泣くなよ、らしくないぞ」
明るく励ましたつもりだったのだが、望乃はさらに俯いてしまった。
やっぱり気のせいじゃなかった。
今日の望乃はどこか“変”だ。
何か、不自然だ。
動きが変なのはいつもの事だが、どうもおかしい。
ほんと、今目の前にいるのは望乃なんだろうか?
ひらひらしたワンピースを着て、めそめそ泣いている、この子が?
調子が狂うったらない。
すると望乃が拗ねたような顔で、俺の方を潤んだ瞳で見た。
俺は一瞬怯む。
「ねぇ、健吾」
「うん?」
「あたし……迷惑?」
「何が?」
映画館を途中で出た事か?
それとも?