由紀子さんが井伏の話をする時、やっぱり少し寂しそうな顔をする。
きっとあの明るさは、から元気だ。
無理してるに決まってる。
由紀子さんの心の傷はまだ癒えていないんだろう。
そう思うと何だか、痛々しい。
胸がちくっとしたのが分かって、俺は首を傾げて窓の外に目をやった。
車が次々に通りすぎ、ライトがぼんやりと滲む。
窓には間の抜けた自分の姿が映った。
ちくちく。ちくちく。
正体不明のナントカ星人が、俺の心の奥の方をつついている。
もやもやとわけの分からない痛み。
おかしい。
どうした、俺。
俺は胸に手を当て、何とかナントカ星人に交渉を呼びかけてみるが、応答はない。
もやもや。ちくちく。
すると急に後ろから服を引っ張られた。