「ゆっ……!なっ何、で…!?」
そこには、確かにあの由紀子さんがいた。
うちの大学の売店の赤いエプロンを着て、名札に“阿笠由紀子”とつけて、レジをいじっている。
嘘だろ。
俺は気が動転して、口をぱくぱくさせた。
「久しぶり。だって働かなきゃ生きていけないでしょ。偶然ここのバイト募集見つけたの。まさか、健吾くんの通ってる大学だとは思わなかった」
まさか、って…マジかよ。
由紀子さんは俺とは裏腹にとても落ち着いた態度で笑っていた。
「380円です」
「…へっ?」
「お客さん、後ろ詰まってます」
「あ、ああ…はい…」
俺が慌てて小銭を出すと、由紀子さんはまた意味深に笑って、「ありがとうございましたー」と店員ヅラして頭を下げた。
実はちょっと、予想してた。
俺は何だかんだで、このままでは終わるまい、と心のどこかで思っていたのかもしれない。
再会は、本当にあっけなかった。
ちなみにあれからまだ一週間しか経ってないのに。
本当にあっけない、あっけない、あっけない……