――あの騒動から、一週間とちょっと経った。
今思うと、とんでもなく現実味のない出来事ばかりだ。
当然ながら、由紀子さんとはもう何の接点もない。
そもそも俺たちは、連絡先さえ交換していないんだから。
ただ俺は、授業中もバイト中も、何かが引っかかって集中できてない。
もう面倒な事から縁を切る事ができた、という気持ちと、なぜかちょっと寂しい気持ちと、複雑な心境だった。
さみしい?
やっぱり変だな。
どうかしてるぜ、だって、
あんなに振り回されたのに。
しかも、あの井伏の元カノだし。
まぁ、とにかくもう会う事もないだろう。
うん。それでいい。それがいいんだ。
そう思って一人で頷いていると、レジに自分の番が来た。
下を向いたまま、商品を台に置く。
そして、財布をケツポケットから取り出した時、頭上から声をかけられた。
「野菜がない」
声を聞いて、俺は思わずバッと顔をあげた。