望乃と輪とは、学部の基礎ゼミで仲良くなった。


基礎ゼミというのは、まぁ大学のクラスみたいなもんで


レポートの書き方だとか、図書館の利用方法だとか、大学の歴史だとか、そういうHR的な事をやるコマだ。

基礎ゼミでは自己紹介もするし、レクレーションなんかしたりするので、他と比べて友達が作りやすいのだ。



「ねー健吾、またこの賭けやろう~!」

「はっ!もう二度としねぇわ!」



望乃がけらけらと笑う。

こいつは細っこくて小動物みたいな女だけど、言動は何だか男みたいな奴だ。

きゃんきゃん五月蝿くて、嵐のような女だと俺は思っている。


俺の保護者だとでも思っているのか、それとも姉ちゃんかなんかだと思っているのか、それとも彼女だと思っているのか、

やたら俺の世話を焼きたがり、アパートも近所だからか、やたらちょっかいを出してくる。


「望乃、あんまり健吾いじめんなよ。可哀相じゃん」

「いーよ、いーよ!自業自得だもん。輪ちゃんも言ってやって」


輪が俺の肩に手を置く。


「……ドンマイ」

「お前に言われると、何かさらに凹むわ」



輪は黒い縁の眼鏡をかけた、華奢で綺麗な顔立ちをしている中性的な男で、物静かでおっとりしている。

望乃が言うに、男と話している気がしないんだそうだ。


だけど何気に俺より身長が高く、足が長い。

(俺は何気に気にしていたりする…)。



自分でも変な組み合わせだ、と思う。

だけど、気がついたらこの三人でつるむ事が多くなった。

どうもウマが合うらしいのだ。


一人暮らしが三人。

バイトがない夜と、究極に金欠の時以外は、大体ここで三人落ち合うような形。



“ゆかり食堂”


行きつけの定食屋。

通い出してからまだ二ヶ月も経っていないが、まるで子供の頃から知っているような懐かしい店だ。

俺はこの店に出会えて、本当にラッキーだと思っている。