あんなに期待していたものとしては、何ともちゃっちく、くだらない、


まるで機密文書のように、失くしたら自分の首が飛ぶのではないかと
まで考えて、

慎重に慎重に取り扱ったものにしては、

何とも頼りなく、下手したら間違えてゴミ箱に捨てられそうなほどで、


さらにあの井伏が託したものにしては、ものたりなく、


俺が味わったあんなに心細い思いに匹敵するものかといえば、

まったく一パーセントも価しない、



そんなものが今手の中にあった。


「これって……あれですよね?」

「うん!」

「………」

「……健吾くん?」

「……マジかよぉぉ」