「本っ当にごめんなさい!謝ります、許してください、この通り」
あまりにも深々と頭を下げられたので、なぜか俺も「いや、そんな」と頭を下げてしまった。
ちゃんと店内は適度な温度になっているはずなんだけど、彼女はそうとう調子が狂ったのか、手でパタパタと仰いで、火照った顔に風を送ろうとした。
「うわぁ…本当にごめんね。図々しく部屋まであがりこんで、ベッドも占領して…」
「いえいえ」
「あっ、そうだ!彼女、すっごい怒ってたでしょう。そりゃあ、びっくりするよねぇ…。ああもう、どうしよう…。あっ、私、弁解しようか!」
「いや、あいつは彼女とかではないです」
「え、そうなの?」
表情がくるくる変わる人だ、と思った。
「それより、井伏さんとは……?」
「……」
―――あ、やばい。地雷踏んだ?