沢木健吾。
歳は、19。
普通に地元の公立中学、
滑り止めの私立高校ときて、
今はよくも悪くもない三流大学に通っている。
それなりに勉強して
それなりに働いて
それなりに服とか髪とか
気ィ使って格好つけて遊んで
それなりに世間体を気にして。
それなりに友達もいて
それなりに読書して映画みて
それなりに若気の至りに走って
それなりに恋して
それなりに将来のこと考えて。
それなりに。
それなりに。
ほら、ぞくに言う、あれだ。
一般ピーポー。
すべてに置いて、人並み。
別にそれに不満なわけでも、満足しているわけでもない。
スリルを求めているわけでも、安定を求めているわけでもない。
つまんない奴だと言われれば、きっと返す言葉が見つからない。
きっとこんなだらけた考え方が、俺をどんどん平凡な奴に仕立て上げていくんだろう。
五月。
新緑がキラキラ光るこの季節。
空は五月晴れでやたらと清清しい。
俺はこのままじゃうっかり五月病にかかってしまいそうなほど、今の生活に慣れてきていた。
朝が苦手な俺は、火曜の必修の一限だけがネックだ。
他は、なるたけ一限を履修しないようにして、二三四限を履修してる。
全部終わると、レンタルビデオ屋のバイトへ。
バイトがない日は、夕飯は自炊(カレーやチャーハンくらいしか作れない)。
か、または、
間取り1DK、駅から徒歩6分の俺のアパートから歩いて3分の『ゆかり食堂』で外食。
これが日課。