近寄って抱きしめると、由紀子さんは「今、そういう気分じゃない」とそっけなく言うだけだった。
でも俺は離さずに小さく呟いた。
何度も。
―――好きだって。
由紀子さんの白い肌は、まるで虚像のようで。
こんなに重なり合っても、ふたりはひとつになれない。
だって俺たちは別々の人間だから。
触れているのに、こんなに近くにいるのに
遠くて、嘘くさくて、夢の中にいるみたいで。
こんなに寂しい想いをしたのは、生まれて十九年、初めてで。
こんなに誰かを愛しいと想ったのも、生まれて十九年、初めてで。
どうしようもないほど、好きだった。