ガタガタ、ガタガタ。
部屋に着くと、由紀子さんは洗濯機を大袈裟に揺らしていた。
外はすっかり夕焼け色に染まっていた。
俺は鞄を適当に放り、ソファに腰を下ろした。
交わった視線が、何だかぎこちない。
「壊れたって?」
「うん。洗濯が終わる音がしたからね、いつもみたいに蓋開けたら、水が溜まったままでさ。どこがおかしくなったんだろう?」
傍には、まだ濡れたままの洗濯物が入った籠が置いてある。
「もう、こいつっ」
叩いたり、揺らしたりしたからといって直るものではないと思ったが、俺はしばらく由紀子さんの華奢な背中をぼーっと見ていた。
棚の上の銀色のおもちゃ箱に、夕日の色が反射する。
あの日のことがこわいくらいに鮮明に、次々に浮かび上がってきた。
“そんなお前に、由紀子が着いてくると思うか?”
思わない。
でも―――。