勝算のない賭けなんて、するもんじゃない。



「ふがっ…!」


――後ろ頭に何かを投げつけられてハッと目を覚ますと、二限の講義がほぼ終わろうとしていた。

振り返ると、望乃(のの)と輪(りん)がクスクス笑っている。



くしゃくしゃに丸まったルーズリーフを開くと、そこには

『あたしの勝ち!からあげ定食』

と書かれていた。


「うあぁぁーーー!!」



俺は思わずガタンっと立ち上がり、情けない声をあげた。



一斉に周りの視線がじろりと俺に集中する。

とにかく皆が俺を見た。


そして望乃が「ぶふっ」とふき出したのをキッカケに、教室中が爆笑の嵐。




「えーっと……スイマ、セン…」



頭をぽりぽり掻いて、肩身の狭そうな俺を見て

近世の文学作品について熱弁していた教授はわざとらしく咳をして、

「…ここは動物園かね」と眉をひそめた。