「次ー航平。」

「ああ。」

これは梅雨の話。
梅雨が始まって、毎日のように雨が降った。
傘は必須で、折りたたみ傘はいつもカバンに入っていた。
でも、天気予報じゃ晴れと言ってるのだからと、もってかない日もあった。
でも、今日は天気予報は外れた。
雨が降ってきた。
急いで帰った。
帰る途中の事。
道端に、新しい折りたたみ傘が落ちていた。封も開けてない、新品。
ラッキーと思って封を開けた。
すると、その中には手紙があった。
「あたしの家にこれを運んで」
家がどこだか知らないし、誰のだかもわからない。
置いとくことにした。
でも、手から離れない。
しかもいつの間にか人もいない。
大通りで、車もよく通るし、人もたくさんいる。
ふと、傘を見ると…

手があった。
人の。
切断された。
びっくりするどころか、血の気が引き、それを思い切り投げ、走った。
もう走れない。というところまできて、気づいた。
目の前にでかい家があることを。
その家の前に女の人が立っていた。
声も出なかった。
そのまま俺の意識は途切れた。


という話だ」

「そのあとは?」

「亡くなったそうだ。死因は不明。」

「ふーん」
みんなが話す内容はあんまり怖くない。
でも、自分が…と思うと怖い。
死ぬんだから…
もう始めた限り、終わることを許されない。
儀式だって、できない。
蓮が許さない。
許したとしても、犠牲を出したくない。
もう、これ以上話も聞きたくない、話すのも嫌だ。