「ねえ、ハルカ。君はさ、なんでこんな事が起きるか知ってる?」
「こんな事って?」
「お互いが見えない事だよ」
「イブキは知ってるの?」
黙り込むイブキ。
僕はイブキの答えを待った。
そして――――――。
「知ってるよ。でも、私はあまり詳しくないの。兄の専門分野だから」
「専門分野?」
「そう……」
「お兄さんが居るの?」
再び沈黙したイブキに、慌てて言葉を付け足す。
「ごめん、無神経だったね」
「ううん、別に大丈夫だよ。それより、私の兄は綾<リン>っていうんだけど」
「リン、さん?」
「うん。で、兄がね、磁場の研究をしているんだけど、私が今居るこの場所は、私の眼には実験場に見えるんだ……」
「実験場?何の?」
先程の事もあり躊躇いがちに聞くと、
「兄の実験の」
イブキは意外とすんなり答えた。
「時空が歪んでるとこんな事も起こるみたいでね、私の兄は磁場が普通じゃないところに実験場を作ったの」
それって……。
「磁場が変だと、時空が歪むって事?」
「そうみたい。私もあまりよくは知らないけど」
僕は知らないうちに、頭を抱えていた。