結局、五校時の授業には1分遅れてしまった。
バタバタとPC室に入ると、運悪く静寂な空気で私の足音や激しい息切れは丸聞こえのようだった。
「遅れて…すいませんへしたぁ…」
息切れしているから変な言い方になってしまう。
うーわ。皆に注目されてるな。
おまけにこんなに髪が乱れて汗も滲んで…穴があったら入りたいと思う人の気持ちがよくわかった。
「ったく、水野といい小池も時間にルーズすぎる。1分の遅刻を甘く見るなよ。」
担当の先生は、生徒の間でも評判があまりよろしくない厳しめなタイプの先生。
新庄先生や他の先生が緩すぎるだけなんだけどね…。
「小池も水野の横に立ってなさい。私が良いと言うまでな。」
ふと横を見ると、気づかなかったけど1人の男子がいた。
おそらくついさっき正面衝突した2組の人かな。
やっぱりこの人も遅れてたんだ。
渋々その男子の横に立ってボーっと先生の説明を聞いていた。
里美たちも居たのが、後ろ姿でわかった。
私が教室に戻るのを待っててくれなかったのが不意に傷だったけど、こうやって立たされるのが嫌だったからなのかな?
叱られる人数が多いほど先生の怒りも爆発しちゃうからかな。
だから、心配しなくても大丈夫だよ。
そう自分に言い聞かせた。
何分か先生の説明があったけど、未だ私達解放されない。
その時、隣で立っていた男子に囁くような声で突然こう言われた。
「君…友達いるの?」
初会話にして直球な質問にある意味驚いた。
そして、返すように私も囁く声で言った。
「います…けど…」
一緒に遊んだり、お昼ご飯を食べたり部活をしたり…
友達は、私にもいるでしょ?
周りからもそう解るでしょ?
でも、完璧な自信がないのは何故?
その男子は、私を疑うようなその冷めた目で私を見ながら
「…ふーん。」
と呟いた。
な、何なの?
この話した事もない見知らぬ男子は…。
もしかして、独りでバタバタ遅刻してきた私か事を可哀想なぼっちさんだと誤解しているの?
じゃあ誤解を説いてあげなきゃ。
「あのっ…私が遅れたのは、部室横で変ないやらしい本見つけて…」
「いやらしい?」
いきなり昼休み事情を説明しようとした私に、その男子は明らかに「はっ?」て顔をしている。
あ!そりゃそうだ。こんな事話しても意味不明だよね…。
「な、何でもないです…。」
やっと解放されたと思ったら、先生はPC室から出て行ってしまった。
後は自由に調べ学習らしい。
隣にいた男子は、何も言わずに2組の他の男子たちのほうへ行ってしまった。
あの人友達いるんじゃん。
あの人かこそがぼっちさんかと思っちゃったよ…。
何だかんだで皆、友達はいるんだな。
私は…
「桃子こっちこっちー」
「里美。」
心から自分がホッとしたのがわかった。