2年3組の女子には、私たちのような仲良しグループがいくつもある。
このお昼ご飯の時間だって、みんなが二人とか三人組のグループで固まって過ごしている。
おそらく先生方は上手い具合にクラス分けをしたのだろう。
このクラスでは男女共、孤立しているような人はいない。
だから、少し怖くなったりもする。
私だけ一人になったりしないか…。
まあ、そんな事にはならないと思うけど。
一年の頃、テニス部に誘ってくれたのも里美たちだし、
話題にも部活でも、四人にはついて行けてると思う。ただちょっと遅れ気味ってだけで。
「桃子だったらどう!?」
「えっ…」
偶にこんな考え事をして会話を聞けていなかったりするから危ない。
「えっ…て。もー、桃子ちゃんさては里美の話聞いてなかったなぁー!」
千紗に肩をつんつんってされて相槌程度に笑った。
「あはは…で、えっと何だっけ?」
「里美の彼氏がさぁ~」
「ちょっ、千紗声大きいってぇ。」
また里美の彼氏ネタねぇ。
恋沙汰にはあまり興味がなくて、恋バナという種の話は私にとって苦手な分類に入る。
もちろんこんな心の声なんて口にできないけど…。
「里美の彼氏がどうしたの?」
「アレが、すっごい上手いんだって~。」
「あ、アレ?」
アレって何だろう。
みんなが頬を赤らめながらきゃあきゃあ騒いだりする理由もちょっとわからない。
いや、全く…。
「はぁー。この純粋め。少しは知っといた方が良いわよー?」
椅子ごと私に近づいてきた千紗は、続けてこんなことを言った。
「アレって言うのがエッチって事くらい、ガールズトークじゃ暗黙の了解よ?」
「ええぇぇぇぇっ!」
みんなが言う“アレ”の言葉の意味をやっと理解できたと思ったら驚きのあまり奇声に近い声を出してしまった。
「そんなに驚く事?」
「そんなんじゃ桃子大人になれないよー。」
私以外の四人はクスクス笑いながら顔を真っ赤にすり私を見て言う。
「いや、でも!まだ早過ぎるんじゃ…」
「あたしらはもうそれなりの年頃なんだよー?」
「それなり…」
「でさぁ、その彼上手いってどんな感じなの?里美。」
彩菜がド直球な質問をして、私も思わず「どんな感じ?」なんて里美に聞いてしまった。
「痛くないんだ…。悠斗とするの。」
「い、痛く…?」
「痛いもんなんじゃないの?アレって。」
「そりゃあ初めは痛かったけど、でもほんの少し。悠斗、優しくてね?私の体調とか気遣ってあんまし痛くしないんだ。」
「でも、なんか遠慮されてるみたいで気持ち良くないんじゃないの?」
千紗の口から出る未知のワードで私の頭の中は終始困惑。
「それが…気持ち良いの。」
そう言って髪の毛を耳にかける仕草も、淡いピンク色に染まった頬もテッカテカな唇も
私たちよりも大人の階段を昇った里美だとより一層色気があるように見えた。