いきなり顔を見つめられ、真剣な表情で語尾も延ばさずはっきりとした口調で望は私にそういった。

これまでの自分の行動がフラッシュバックのように頭を巡った。
泣きたいけどここで泣いたら嫌われるから笑おう。
困ってるけどここで困ってるって言ったらうっとおしがられるから自分でなんとかしよう。
怒りたいけどここで怒ったら拓海にも周りにも迷惑だからやめよう…。

―――そうか、結局全部、自分かわいさに自分を押し殺してたんだ。
誰かのためじゃない、自分が傷つくのが嫌だっただけだ。

「『自分』って一生付き合ってくパートナーなんだから。殺しちゃだめだよ」

そういわれた瞬間、涙が溢れて来た。どんどんどんどん溢れてきた。
周りの目は私と望に向いてる。
望ゴメン、でも今はもう止められない。

「私ね…わた…しっ…今日フラれたの…もうムリだっ…って…っ…」
「うん」
「ホントはねっ…その場で泣きっ…たかった…」
「うん」

望は何も言わず私の背中を優しくさすってくれていた。
どれくらい大きな声を出していたかわからない。
こんなに泣いたのは、あの親友が転校してしまうことを知った日以来だった。

あの時から止まっていた私の時間が、今やっと、動き出した気がした。