そう、あの時転校していった親友―――それがのんちゃんこと望だったのだ。

「そういえばそんな名前だった…気もする…」
「ひっで~な~!こっちはようやく戻ってこれて一番に会いに行こうって思ってたのにさ~っ」

だってあの時の望は女の子みたいな顔と服装で。
気が弱くて、でも優しくて…
…そうか、そういえば独特の語尾の延ばし方がなんで嫌じゃなかったのか、ようやくわかった気がした。
のんちゃんもあんな喋り方をしてたんだ。

「ま、親父の仕事も一段落してようやくこっち戻って来たから。またよろしくね~」

そういうと望は当たり前のように私の手を取って歩き始めた。
嫌じゃなかった。
懐かしさもあったけど、それとは別の感情が私の中に芽生えていたから。

「うん…よろしく!」


望は私にとっての『鍵』だったのかもしれない。

私の心を閉ざすきっかけとなったあの出来事。
でもその心を開いたのも望だった。

もう何も怖くない。もう今までの自分とは違う。
今まで損してきた分何倍も、何十倍も人生楽しんでやる。
できれば、この人の隣で…。

私はその気持ちだけは読まれないようにと、望の手をぎゅっと握り返した。


END.