やめて。

それ以上もう言わないで。

「理紗…」

このテーブルの周りだけ、重苦しい空気が漂ってる。
周りのカップルはあんなに楽しそうに喋ってるのに。

「…ごめん、もう無理だ。別れよう」

嫌な予感はしていた。
最近メールや電話をしても、そっけない態度ばかりだった。
私の知らない女と歩いているのを見たという噂も最近聞いた。
学校内でもその容姿で女子の注目を集めている拓海の噂はあっという間に広がる。

だから覚悟はしていたはずだったのに。
後頭部を思いっきり殴られたような、鈍い衝撃が走る。

「ごめんな。でも理沙だったら、俺よりいい奴絶対いるし」

『だったら』って何よ。
たった数ヶ月の付き合いで、私の何がわかったっていうのよ。

――そうか、だから私も拓海のこと、何にもわかってなかったんだ。
一緒にいた時間がもっと多ければ、こんな結果にはならなかったのかな。
もう、よくわかんないや。