10年前、7月7日





「いやぁぁぁーー」






「もう。お母さんとお父さんをこれ以上困らせないで。月ちゃんを見習いなさい」







生まれて初めて引越しをすることになった。








大好きな友達、大好きな家。




すべてが無くなるのが嫌で、引越しの前日に家で泣きじゃくった。








それはそれは大きな声だったから、近所の人が何度も家を訪ねてきた。







私は一人で家を飛び出し、近所の公園のブランコに座った。




「なあ。どうしたん?」








「あんね、引っ越す事なってん。お引越しいやだぁ・・」








私よりも少し背の高い男の子が声をかけてくれた。



「でも、新しい友達できるで?いいやん」








「もっと、ここで思い出作りたかったもん」








男の子は隣のブランコに座ると空を見上げていた。







「んならさ、今から思い出作ろうや」



その子は私の手を握ると、まず連れて行った場所は私の家だった。




「お母さんに思い出作ってくるから、夜の8時までには帰る言うてき?」










「・・・分かった」








そして、ここから私たちの思い出作りが始まった。