リュウは皿洗い場で手を動かす。
頭の中には、ついさっきハルキに抱きかかえられるユイの姿が浮かんできて、とっさに頭を左右に振る。
「なに、思い出してんだ…俺…」
そこに、食器を下げてきたノブが来る。
「リュウ、さっきのハルキ凄かったよな?男らしくて」
「あー…やっぱ現役には敵わないよな…?」
「なんだよそれー……勝ちたかったのかよ?」
「えっ…?」
ノブの言葉にリュウは戸惑う。
" 勝ちたかった "…?
「…おい、どうした?」
「あっ…いや、っていうかハルキに勝てるわけないだろ?」
「だよなぁー?あ~ぁ、俺も野球とかやっとけば良かったなぁー」
そう言ってノブは店内に戻る。
リュウは、お皿を洗う手が進まないでいた。
「俺…なに考えてんだ…」