「お姉ちゃん、入るよ」


春陽は二階に上がると、茉那と拓馬を奏葉の部屋へと案内した。


「春陽ちゃん、俺の部屋に案内した方がいいんじゃない?カオルさん、部屋までジュース運んできてくれるんでしょ?」

奏葉とカオルさんのいさかいを茉那や拓馬にあまり見せたくなかった俺は、春陽に言った。


「何言ってるの、まぁ君。お姉ちゃんのこと甘やかしちゃダメ。それに、茉那さんはお姉ちゃんが連れてきた友達でしょ?」

ところが、俺の気遣いなどそっちのけで春陽は奏葉の部屋のドアを押し開けた。

春陽が開けたドアの隙間から、不機嫌そうな目でこちらを睨む奏葉の顔が見える。


「お姉ちゃん、友達はちゃんと自分で部屋まで案内しなよ」

春陽は唇を尖らせながら、奏葉の部屋へずかずかと足を踏み入れた。

その後ろを、茉那と拓馬がひどく遠慮がちについていく。

二人だけ奏葉の部屋に入れておくのは心配なので、俺も後に続いて後ろ手に部屋のドアを閉めた。