「あの……あたし、今日お邪魔したらまずいかなぁ?」

俺達の言い争いを聞いた茉那が、申し訳なさそうな表情で奏葉を見上げる。


「あぁ、茉那――……」
「大丈夫。学校終わったらそのままうちに来ていいよ」

俺の言葉を奏葉が遮る。

奏葉は茉那にそう言ってから、睨むように俺を見上げた。


ムカつく……

混みあがる怒りを抑えるために、俺は手の平で拳を作ってぎゅっと握り締める。

俺が怒りで小さく肩を震わせていると、拓馬が笑いながら俺の肩をポンと叩いた。


「茉那が行くなら俺も今日遊びに行っていい?ひさしぶりにカオルさんにも会いたいし」

「だから、急にそんな人が来たら、カオルさんも困るだろ?前もって――……」
「どうぞ。森宮くんも茉那と一緒に遊びに来たら?」

拓馬に断ろうとする俺の言葉を、奏葉がまたしても遮る。


「いいの?じゃぁ、奏葉ちゃんがそう言うなら遠慮なく遊びに行かせてもらおっと」


調子に乗った拓馬がなれなれしい口調で奏葉の名前を呼ぶ。