「あ、真宏。そういえばね……」
ついさっきまで奏葉と会話をしていた茉那が、突然俺の顔を見上げた。
「今日、奏葉の家に遊びに行くことになったんだ」
そう言って、茉那がにこりと笑う。
「奏葉と約束してたの。妹の春陽ちゃんを紹介してもらうんだよ」
「え!?」
驚いて奏葉の方を見ると、彼女がさっと俺から視線を反らす。
「お前、カオルさんにその話してるのか?」
俺の問いかけに、奏葉は視線を反らしたまま答えた。
「してるわけないでしょ?私の家なんだから、何でいちいちあの女に断りをいれなきゃいけないのよ」
「は?お前なぁ……」
ムカつくのと呆れとでその続きが言葉にならない。
そりゃぁ、あの家はもともと祐吾さんや奏葉達の家かもしれない。
でも今はカオルさんが祐吾さんの妻として、そして奏葉達の母親としてあの家にいる。
突然奏葉が友達を連れてきたりしたら、困惑するに決まってる。