ある日の放課後、俺は茉那がクラスの女子達から理不尽な言いがかりをつけられて一人で掃除をさせられているところを目にした。
大きな目を涙で潤ませながら一人で掃除をしている茉那を黙ってみていられなくなって、俺は彼女を無視している女子達に話をつけに言った。
それが、俺と茉那が話すようになったきっかけ。
女子達は、茉那がぶりっ子だから彼女を無視しているのだと言った。
女子達の話に因ると、茉那は男子の前だと声音が変わる。
それで彼女達は茉那がムカついているということだった。
俺はその理由のあまりのバカらしさに、あきれ返ってしまった。
女子達は男の方が幼稚だというけど、俺からしてみればそんなことで誰かを疎外する女の方がよっぽど幼稚だ。
俺が茉那と話すようになってから茉那は女子達に無視されることはなくなったが、彼女は今でも友達を作るのが得意ではないらしい。
だから今でも、茉那の声に元気がないとクラスの中で疎外されているんじゃないかとつい気になってしまう。
それは茉那に対する“親心”という感覚に近かった。