数メートル向こうで、茉那がにこにこと笑いながら俺達に手を振っていた。

茉那の隣には拓馬がいて、俺が振り返るとポケットに突っ込んでいた手を片方出して挨拶するように高く挙げた。


「お前らが一緒に登校してくるなんて珍しいな」

「あ、あぁ。駅で偶然会ったんだよ。な?茉那」

何気ない声で尋ねると、拓馬が何故か少し焦ったように茉那を見る。


「うん、そうなの」

茉那は焦っている拓馬には少しも気付いていない様子でそう答えると、大きな丸い目で俺と奏葉をじっと見比べた。


茉那は俺達をじっと見つめたあと、彼女にしては珍しく、やや低い声で俺達のどちらにというわけでもなく問いかける。


「奏葉と真宏は今日も一緒に学校に来たんだ?」

「あぁ。カオルさん家から学校までの道にまだあんまり慣れてないしな」


「そう」

俺の言葉に、茉那がやっぱり少し低い声で俯きがちに答える。