学校が目前に迫ったところで、奏葉が数歩後ろを歩く俺をもの凄い形相で睨んだ。

家を出てからずっと、奏葉は俺に対してこんな調子だ。

家を出た直後から奏葉に睨まれ続け、学校が見える頃にはそれにもすっかり慣れてしまった。

だが、カオルさんの家に引っ越してきてからもう一週間が経つというのに、後ろをついて歩く俺を飽きもせず毎日毎日睨みながら登校する奏葉もどうかしてると思う。


俺が無視して奏葉の数歩後ろを歩き続けていると、校門の前に差し掛かったところで彼女が足を止めた。

彼女の背中にぶつかりそうになり、俺は慌てて足の裏に急ブレーキをかける。


「いつまで着いてくるのよ?」

立ち止まった奏葉が相変わらず怖い顔で俺を振り返る。


「だって、俺の学校ここだし」

俺は人差し指で校舎の方を指し示す。

その言い方が勘に触ったのか、奏葉は既に寄っている眉間の皺をさらに深く寄せて唇を引き結んだ。


「奏葉、真宏!おはよう」
                
校門の前で睨みあっている俺達は、茉那の高い声に呼ばれて同時に振り返る。