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「はぁー。いいなぁ、奏葉。これから高校卒業まで、真宏と夢の同棲生活を送れるなんて……」
昼休み。
茉那がお弁当を箸でちまちまとつまみながら何度もため息をつく。
いい加減聞き飽きた私は、冷めた目で茉那を見つめた。
「あのね。私にとってはその夢は悪夢なの。それに同棲じゃないし。あいつはただの居候」
「居候でも羨ましいよ!だって、学校がない日も毎日真宏に会えるんだよ!!」
茉那が両手を合わせて空(クウ)を見ながら、うっとりとした目をする。
「あぁ、そう」
呆れてそれ以上言葉を返せない。
茉那がそう思うのは、あいつに対する恋愛感情があるからでしょうが。
でも、残念ながら私はそんなものは持ち合わせてない。
人の気も知らないで……
空想の世界に飛び立ってしまった茉那を横目に、手にしたサンドイッチの端をかじる。