「自己紹介は普通フルネームでするもんだろ。母親がつけてくれた大事な名前なら、ちゃんと名乗れよ」

頭上から降ってくる、諭すような真宏のエラそうな声。


「もったいないじゃん。いい名前なのに」

「どうしてあんた――……」
「あ、予鈴!」

茉那の叫び声と学校から聞こえるチャイムの音。


どうしてあんたなんかにそんなこと言われないといけないのよ?


私は真宏に言いかけたその言葉をぐっと喉の奥へと押し込んだ。


いい名前なのに、もったいない……?


そう、確かにもったいない。