「え、っと。名前なんて言うの?」
しばらく頭を掻いたり、髪の毛を触ったりしていた拓馬は、おそらく私への対応を散々考えたであろう後に唐突にそんなことを尋ねてきた。
「月島」
あんなに考えたなら、もっとマシな質問してくればいいのに。
そう思いながら、私は拓馬に名前を告げた。
「あぁ……月島さん、か」
拓馬が私の名を復唱しながら、何とも煮え切らない複雑な表情を浮かべる。
そんな拓馬に同情でもするように、真宏が深い息をついた。
「やっぱ、親切心の欠片のないオンナだな」
「は?あんたなんかに――……」
「“そわ”だろ。月島 奏葉」
何か言い返そうとした私の声を真宏に遮られる。
「へぇ。変わってるけど、可愛い名前だな」
真宏の言葉を聞いた拓馬が笑う。