「何してんの?」
拓馬は耳の傍にある伸びた髪の毛を指で触りながら、私達の方にゆっくりと近づいてきた。
「おはよう」
近づいてくる拓馬に、茉那がにっこりと笑いかける。
それを見た拓馬が、やけに嬉しそうに茉那に笑い返した。
「今偶然茉那に会って、友達選びについて指導してやってたとこ。なっ?茉那」
真宏がチラリと私を見ながら、嫌味のたっぷりこもった声で言う。
私を前にして、彼に何と返事をすればいいのか分からないのか、茉那の視線がきょろきょろと宙を泳いだ。
「友達選び?」
拓馬が不思議そうに首を傾げる。
「そ。友達選び。茉那が素行の悪い友達と仲良くなったりしないように、俺が教えてやってたんだよ」
「ちょ、真宏!」
エラそうな口調で拓馬に話す真宏を見て、茉那が心底困った顔をする。
茉那は真宏と拓馬の前で意味もなくあたふたとした後、最終的に眉尻を思い切り下に落として私の顔を見上げた。