「お前、ほんとに親切心の欠片もないオンナだな」

嫌味ったらしくそう言って、真宏がイヤホンの紐を私に放り投げる。

私は不服そうな顔で見下ろしてくる真宏を睨むと、彼を無視してそのまま学校を目指して歩を速めた。


「ムカつく」

背後から真宏の舌打ちが聞こえてくる。

そのすぐ後、パタパタと忙しなく私の方に近づいてくる足音が聞こえた。


「おはよう、奏葉!」

すぐ傍まで駆けてきた茉那が、私の顔を覗き込みながらにっこりと笑う。


「おぅ、茉那。今日も朝から会ったな」

私達のすぐ傍にいた真宏が、さっきまでとは打って変わって、驚く程愛想の良い声で茉那に話しかけた。


「あ、あれ?真宏?」

まさか私のすぐ傍に大好きな“恩人”が立っているとは思わなかったのか、茉那が真宏を指差して口をパクパクとさせる。


「茉那、まさかこいつがお前の友達とはな。お前、友達選ぶときは相手の性格もちゃんと確かめた方がいいぞ?」

驚いて真宏と私を何度も交互に見比べている茉那に、真宏が私を挑発するような口調で言った。