朝から私を苛立たせて一日を台無しにする。

その声が、またひとつ増えた。


私はため息をつきながら、スマホで聴いていた曲の音量を上げた。


「……!……!!」

高野 真宏が家を出てからずっと無視を決め込んでいる私の前に回り込んできて、何か言いながら私の前でぶんぶんと大きく腕を振る。


うざい。

前に立ちはだかる真宏を避けて、前へと進む。

真宏の前を通り抜けようとしたとき、私の片耳からスマホと繋いでいたイヤホンがするりと抜けた。

突然のアクシデントに驚いた私は、慌ててイヤホンが外れた方の耳に手の平をあてる。


「無視すんなっつーの!」

振り向くと、真宏が私のイヤホンの紐を摘んでこちらを睨んでいた。


「返して」

苛立ちで眉根がより、眉間に皺がよるのが分かる。