「当然だと思う。あの女は綺麗だし、ママよりもずっと若い。それにきっと、控えめですごく優しい。男の人にとっては魅力的な女性なんでしょ?」

唇にうっすらと笑みを浮かべながら、それでいて彼女の目は少しも笑ってなどいなかった。


「私はあの女が大嫌い。あの女を好きなパパが嫌い。それに、あの女の親戚でその上あの女を庇うあんたも大嫌い」

そう言い放つ彼女の目には、計り知れないほどの憎しみが込められていた。

そして、その奥にあるのは哀しいくらい深い絶望。


その目の冷たさに、背筋がぞっと震える。


彼女は俺をしばらく睨みつけてから、俺に背を向けた。

立ち去る彼女の背中を見送りながら、俺はそこから動くことも何か言うこともできなかった。


よく知らない人間からこんなにも強い憎しみをぶつけられ、拒絶されるのは初めてだった。