驚いている俺を見て、目の前に立つ女が唇の端をほんの少し持ち上げる。
そして、立ち上がった。
「おい!どこ行くんだよ?帰んのか?」
歩き出した彼女の背中を慌てて追いかける。
「あんたには関係ない」
彼女はすぐ後ろを追いかける俺を振り返りもせず、突き放すようにそう言った。
その勢いに押されて立ち止まった俺は、小さくため息をつく。
せっかく見つけても、連れて帰らなかったらカオルさんに申し訳が立たない。
俺は公園の入り口へと進んで行く彼女の背中をじっと見つめた。
細いが、凛とした真っ直ぐな彼女の後ろ姿。
そう言えば、あの女の名前はなんだったけか……
彼女が立ち去ろうとしているこの状況で、俺はふと呑気にそんなことを思った。