なんとなく小馬鹿にされたような気がして、俺は彼女を睨み返した。

つくづく、人の気分を損ねる女だ。

せっかく探しに来てやったのに、腹が立つ。


「お前の帰りが遅いから、迎えに来てやったんだよ」

苛立った声で言うと、彼女は今度は小さく鼻で笑った。


「子どもじゃないんだから、迷子になんてならない」

そう言って一度言葉を切り、彼女はもう一度口を開く。


「高野 真宏(タカノ マヒロ)。どこかで見たと思ったのよね。まさかあの女の親戚が茉那の“恩人”とは思わなかった」

彼女が苦々しい表情を浮かべる。


「茉那……?」

その名前で思いあたる知り合いは、中学のときからの同級生の都築 茉那くらいだ。

それと同時に、ある一つの記憶が甦る。


「お前、茉那の……」

俺は数日前に校舎の前で茉那に会った日のことを思い出した。

そのとき茉那が友達だと言って俺と拓馬に指し示した女が一人いた。


あのときの女がこいつだったのか――……?

どおりで、初めて会ったときにどこか見覚えがあったはずだ。