俺は公園に足を踏み入れると、真っ直ぐにあの女が座っているブランコへと歩いていった。
サクッ、サクッと地面を踏み鳴らす音が公園の静寂の中に響く。
だが彼女は翳した何かを見上げたままで俺が近づいていることに気付く様子はなかった。
「お――……」
「何の用?」
声を掛けようとしたとき、彼女が翳していた手をおろして俺の方を睨んだ。
街灯に照らされて、彼女の少し吊りあがった大きな目が夜の猫のように鋭く光る。
「お前こそ何やってんだよ?女子高生がこんな夜中に一人でうろついてたら痴漢にあうぞ」
俺がそう言うと、彼女は俺を睨むのをやめて嘲るように笑った。
「どうしてあんたがそんなこと気にかけるのよ。関係ないでしょ?」