「カオルさん。俺、ちょっとその辺見てきてあげるよ」

俺の言葉に、カオルさんがほっとしたように表情を緩めた。


「まぁ君」

「真宏くん、ありがたいけど、でも……」
 
口ごもる祐吾さんに、俺はにっこりと笑ってみせた。


「大丈夫ですよ。ちょっと見てくるだけなんで」

「でも……」


祐吾さんはそれでも、「うちの問題だから」と言い張ってしばらくの躊躇っていた。

だけどそれを何とか説得して、俺は家を出た。


知らない町だったが、親父の車からずっと外を眺めていたので一番近い駅までの道のりは覚えていた。


とりあえず、駅の周辺を探してそれから戻ってこよう。

そう決めて、夜の道をてくてくと歩く。


閑静な住宅街が立ち並ぶせいか、街灯はあまり多くはなく夜の道は薄暗かった。