「祐吾さん、やっぱり奏葉ちゃんの携帯にもう一度電話してみたら?」

一階の廊下に降り立ったとき、カオルさんがそう言っている声が聞こえた。


「あぁ……でもどうせすぐ切られるだろ」

祐吾さんの弱々しい声がカオルさんに応える。


「どうかしたんですか?」

「まぁ君……」

俺がリビングに入ると、カオルさんと祐吾さんが驚いた顔をして同時に振り返った。


「真宏くん……何でもないから大丈夫だよ」

祐吾さんが俺を見て笑う。

だが、カオルさんが青白い顔で俺に言った。


「奏葉ちゃんが、まだ帰ってなくて……」

「薫!」

うろたえるカオルさんを、祐吾さんが低い声で制する。


あんなに苦しめられているのに、カオルさんはあの女の心配をしているのか……


カオルさんにこんな不安な顔をさせているあの女のことを思うと、やっぱり腹が立った。


でも――……