「ママが死んだときあたしまだ小学生で、お姉ちゃんに比べてママとの思い出も少なくて。ママのことは大好きだったけど、新しいお母さんが来たならそれはそれで受け入れられるっていうか……仕方がないというか……そう思うんだけど、お姉ちゃんは違うみたい」
春陽が眉を寄せて困ったように笑う。
分からないでもないが、それにしたって……
「お姉ちゃん、あたしには割と普通に接してくれるんだけど……でも、本当はあたしのことも怒ってると思う」
春陽は淋しそうに笑うと、俺の部屋から出て行った。
一人になった部屋の中で、俺はくしゃくしゃと髪を掻いた。
家族がこんなに悲しい思いをしてるのに、あの女は一体何を考えてんだ。
自分勝手過ぎるだろ。
春陽の淋しそうな笑顔を思い出して、俺はますますあの女に対する苛立ちを募らせた。
そのとき、春陽が開けたままにしたドアの向こうからカオルさんの声が聞こえた。
その後に祐吾さんの声。
はっきりとは聞こえないが、何か困っているような声だった。
気になって部屋から出て階段を降りる。