静かな夕食を終えて部屋に戻ると、誰かがドアをノックした。


「まぁ君。ちょっといいかな?」

ドアを開けると、春陽が立っていた。

中に入れてやると、春陽がものすごく申し訳なさそうな顔で俺を見上げる。


「あの……来て早々イヤな思いさせちゃってごめんね」

その表情で、彼女が姉であるあの女のことについて謝罪をしているということが分かった。


「何で春陽ちゃんが謝んの?」

どう考えたって、中学生の妹にまでこんな気遣いさせているあの女が悪いに決まっている。

俺がそんな風に思っていると、春陽が伏し目がちに言った。


「お姉ちゃん、昔はあんな感じじゃなくて、もっと人に優しかったんだけど……」


春陽はそう言うが、俺にはあの女が優しかったことがあるなんて、全く想像もできなかった。

眉を顰めていると、春陽が続ける。


「あたし達のほんとのママね、四年前に病気で死んじゃった」