食卓にはさっきからずっと重苦しい空気が流れ続けていた。


俺の前には誰も座っていないのに、一人分の食事がきちんと用意されている。

食べる人がいないから、その食事は綺麗なままで一向に量が減らない。


ぽっかり空いたその席を気にしながら悲しそうな顔をしているカオルさん。

それに気付いているはずなのに、わざと話題に出そうとしない祐吾さん。

そして、出された自分の食事を黙ってただ黙々と口に運んでいく春陽。


つい少し前までの和やかで楽しい雰囲気が、あの女によってぶち壊された。


「奏葉ちゃん、ごはんどうしてるのかしら……」

玄関を気にしながら、カオルさんが言う。


「小遣いはやってるんだから、金はあるんだろう。放っておきなさい」

祐吾さんが、カオルさんの顔も見ずに冷たく言った。

さっきまでの人が良さそうな祐吾さんのことを思うと、まるで別人みたいだ。


あの女は、この家族にとって癌みたいなやつだ。

昼間のあの女の態度を思い出すと、また怒りが込みあがってくる。