見上げて、そして睨む。


「なんだその目は?」

父が私よりもずっと怖い目をして見下ろしてくる。


「祐吾(ユウゴ)さん、いいんです。気にしないでください」

  
あの女が媚びるように父を見上げる。

あんたなんかに庇われる筋合いはない。

            
私は憎しみを込めて彼女を睨んだ。

それを見た父が、また何か言いたそうに眉を寄せる。

          
父はいつだって、この女の味方だ。

                  
実の娘よりも死んだママよりも、他人のこの女が大事らしい。

      
私は父と彼女に背を向けると、玄関のドアに手を掛けた。

これ以上この場所に居たら窒息しそうだ。