私は周りを取り囲む家族達から目を反らすと、目の前にある料理を無心で口の中に掻きこんだ。
短い時間で食事を終えると、店内を忙しく動き回っている佐伯さんに会釈して立ち上がる。
会計を済ませて店を出た私に、夜の風が冷たく吹き付けた。
「さむっ……」
春といえど、夜はまだ寒い。
私は服の上から腕を擦ると、携帯を取り出して時間を確かめた。
20時前だった。
家を出たのが19時前だったから、家ではまだ食事の最中かもしれない。
私は携帯をポケットにしまうと、ゆっくりと歩き出した。
家に帰るのはまだ早い。
そんなときの行き先はひとつだけだ。
私は、さっきいたファミレスから見えていた小さな公園へと向かった。