近所のファミレスは、思ったほど混んではいなかった。

店に入った私は、迷わず奥の窓側の席を選んで座る。

そこがここに来たときの私の定位置だった。


ファミレスのある場所はほんの少し高台になっていて、私が座るその場所からは小さな公園が見下ろせる。


「いらっしゃい。今日は何にする?」

ぼんやりと外を眺めていた私に、二十台後半の女性店員が笑顔で話しかけてきた。


「佐伯さん。こんにちは」

私も彼女に笑顔で答える。

佐伯さんは毎週土日にこのファミレスを訪れる私の顔なじみだった。

二年前ここに通い始めたときはまだ契約社員だった佐伯さんだが、今ではここの正社員になってお店を仕切っている。


「今日は何にする?」

メニューを差し出す佐伯さんに、私は一番安い料理を指差して頼んだ。


「かしこまりました。おまけしとくね!」

佐伯さんは伝票を書くと、私に目配せしながらそう言った。