それは、事故に遭って目覚める直前に見た夢。

あの夢の中で、私は真っ暗な闇の中をあてもなく彷徨っていた。

そこは前も後ろもなくて、私は自分の足でうまく立っているのかどうかすらわからなくて。

一筋の光さえ見えないその闇の中で、今にも消えてしまいそうだった。

そのとき、私を呼んだ声。

夢の中でなぜかとても懐かしいと思ったその声は、今思うと真宏の声に似ていた気がする。

今にも全てを放棄してしまいそうだった暗闇の中、私を呼び戻してくれたのは真宏だったんじゃないか。

あの事故のあと、病院を退院してから以前よりも近くなった真宏との距離。

彼が私のそばで名前を呼ぶ度、ちょっとずつその思いが確信に変わるのだ。


「そわ」

真宏が振り向いて私の名前を呼ぶ。


「何ぼーっとしてんだよ」

相変わらずふてくされた顔の真宏が不満そうに私を睨む。

そんな真宏を見てクスリと笑ってから、彼に近づく。