「あーあ。そわの家出て一人暮らしすんの、淋しいな」
「いいじゃん、一人暮らし。楽しそうで」
「楽しそうだけど……これまでみたいに気が向いたときそわの部屋入ってこんなふうにぎゅってできない」
真宏がため息混じりにそんなことを言って、悪戯に私の耳を食む。
「ちょっ……やめてよ、変態。だいたい、あそこはもともとママの部屋なんだから。さっさと出て行ってよね」
真宏の行為に一気に顔が熱くなるのがわかって、それを誤魔化すように彼の顔を手で押し退ける。
「お前、可愛くない」
低い声でぼやいて、真宏がふてくされた顔で私から離れる。
自分から突き放したくせに、いざ真宏が離れてしまうと今度はちょっと淋しくなってしまう。
我ながら、自分勝手だ。
私からわざと少し離れて、ふてくされてそっぽ向く真宏。
そんな彼の横顔を見つめながら、私は最近思い出したひとつの夢の記憶に思いを馳せた。