「俺はもうすぐ大学生だよ」
パパと薫さんは、私が高校を卒業するのを待ってから結婚式を挙げた。
それは受験勉強の妨げになると困るから、という相変わらずおせっかいな薫さんの配慮だったのだけど。
結局私は目指していた天文学の学べる大学に現役で合格ができず、もう一年受験勉強することになった。
真宏のほうは、しっかりと志望大学に合格していて春から晴れて大学生。
真宏の両親は最近アメリカから帰国したのだけど、実家には戻らず一人暮らしを始めるらしい。
もうすぐうちを出て行く彼は、最近バタバタと忙しそうだ。
「あぁ、そうだね。おめでとう」
目を細めて眩しげに真宏を見ると、彼が不満そうに顔を顰める。
「おめでとう、じゃねぇよ。お前が春から通う予備校、蒔田と同じとこなんだろ?しかも、志望大学も同じみたいだし」
「あぁ、うん。あの予備校、いいらしいよ。委員長が勧めてくれた」
普通に真顔で頷くと、真宏が不満そうな表情のまま私の手を強く握りしめた。